ゴミ拾い ただ今修行中
E-CUBE
ゴミ拾いを通して、この国に貢献したい。
長谷川裕昇
1973年生まれ。京都府出身。2003年9月学生ビザでニュージーランドに来る。ケーロード付近をゴミ拾いしているボランティア団体「レインボー」を結成。毎週日曜日に活動中。平日は、老人ホームでボランティア活動もしている。将来的にクライストチャーチやウェリントンなど他の都市にも活動が広がって欲しいと思っている。

24時間営業のショップ、スーパーなどが急増し、ますます都市化が進むオークランド。
長谷川裕昇さんは、そこでゴミ拾いのボランティアをしていた。
私の祖父は20年もの間、海外で染色の技術を教えている人でした。もちろん英語が堪能でした。幼い頃から、そんな祖父を見て育った私は、英語や海外生活に興味を持っていきました。そして、いつしか、海外で暮らせればいいなあと思っていました。
 大学に入学すると、毎年、夏休みを利用して海外旅行に出かけていました。エアチケットのみを購入し、バックパックを背負ってオランダ、ベルギー、タイ、シンガポールなどのいろいろな国を2週間から長い時には、2ヶ月間かけて旅しました。その頃は全く英語はダメでした。 いわゆるブロークンイングリッシュで単語を並べて、身振り手振りで何とかコミュニケーションを取っていました。ですが、それぞれの国の美術、歴史、食文化などに接することにより、30歳になる前には、必ず海外生活をしたいと決意しました。
 大学を卒業して数年、仕事をしてお金を貯め、03年9月にニュージーランドに来ました。


英語を勉強するために語学学校に通った
英語の習得が目的のひとつではあったのですが、もうひとつ気になっていたことがありました。それは社会福祉についてでした。英語の習得だけでしたら、アメリカやオーストラリアなど他にも候補地はありました。ですが、社会福祉が進んでいる国という点で最終的にニュージーランドに決めたのです。
 私は、日本で申込みをしてオークランドにあるAIS ST HELENSという語学学校に通うことになりました。
 この学校のメインキャンパスは、シティから高速道路で5分のウエスタンスプリングスというエリアにあり、1つの学校内で世界的に認められている学位までが取得できるということで将来、仕事で役に立つ資格を取得したいと考えている学生に人気があり、一般英語コースから始め、ビジネスコースの学位を取得している学生も多いようです。
 英語を聞くこともしゃべることもままならなかった私は、この学校に通うことによってボキャブラリーも増やすことができました。そして、真剣に英語を学ぶのなら学校に通うべきだと痛感したのでした。
 学校に通い、他の国の友達も増え、南島を旅するなど楽しい学生生活を送っていました。
 数ヶ月経った頃でした。生活にも慣れ、十分毎日を楽しく過ごしていたのですが何か物足りなさを感じたのです。せっかく海外に来たのだから、もっと積極的にいろいろなことにチャレンジしたいと思ったのです。そこでオークランドの街に落ちているゴミ拾いをしてみようと思ったのです。


ゴミ拾いをしようと思ったのは2つの理由があった
二ュージーランドは、日本と同じく、各地方の自治体がゴミを回収しています。基本的に、一般家庭のゴミはリサイクルできる物とできない物に分けて出すことになっています。地域によって少し違いはありますが、オークランド市内は、1箱ずつゴミ箱とリサイクル箱が支給されます。場所によっては、市の指定したゴミ袋を使用します。このゴミ袋は、スーパーで売られており、一般ゴミはこのゴミ袋に入れて捨てます。袋の外側には、中に入れてはいけない物や回収の時間などが印刷されているので、それを読めばいいのです。
 リサイクルに出すゴミの分別は細かく分類されていて、きちんと分類しないと回収してくれないこともあるくらいです。また、ニュージーランド人は、物を大切にします。何度も修理を重ねて使い込みます。10年以上経った中古車が街で多く走っていることからもそれはわかります。
 そんなことからも、この国の物に対する姿勢は、見習うべきところが多いと思うのですが、私は、この国に来た当初から路上にゴミが多く落ちているなあとか、想像していたよりも汚いなあと感じていました。一時的ではあるにしろ、自分がこうして暮らしている街で気持ちよく過ごしたいと思ったのがゴミ拾いをしようと思ったキッカケでした。資金もマンパワーもないので、何か大きなことをすることはできませんが、自分が出来る簡単なことから始めてみようと思ったのです。
 また、最近この国では急激に移民や留学生が増えたことから、いろいろな問題が起こっています。留学生の運転によって事故を起こしてしまったとか、ビザを取得するために詐欺まがいのことをしていた業者が逮捕されたなどです。
 そういった事件が新聞やテレビなどのマスコミで取り上げられることが多くなりました。その影響からか、この国の一部の人の中には、アジア人をよく思っていない人もいるようです。日本人が問題を起こしていなくても、彼らにとってみれば、アジア人だから日本人も同じだという差別や偏見の目で見ることもあると思います。私は、身近でもそういった風潮を感じました。そこで移民や留学生の中にも、この国を愛し、貢献したいと思っている人がいるということをアピールしたい。そして、地元の人達との距離を縮めるためにも、ゴミ拾いをしようと思ったのです。


ゴミ拾いをするための準備に移った
まずは、友達にゴミ拾いへの思いを話し、意見を聞きました。友達の中には、なんでそんなことをするの?何になるの?という人も多くいました。ですが、私の考えに賛同してくれた人達が何人か集まり、年明けから少しずつ始めてみようと決めたのです。04年1月からゴミ拾いをすることになりました。
 ですが、実際に行動に移す前にやらなければいけないことはありました。というのも、この国について、知らないことの方が多かったからです。いろいろなことを調べなければいけませんでした。例えば、本当にゴミ拾いをしていいのか?ということです。許可などがいるのか、法律には触れないのかを調べ、ゴミ拾いをすることに問題がないとわかりました。
 また、どこの場所にいつ、どのくらいのゴミがあるのか調べました。学校の授業が終わった後や休日など、時間が空いたときに実際に街を見て回りました。クイーンストリート、パーネル、ニューマーケットなど数週間かけて、調査しました。清掃車が回っているエリアがあることを知ったり、場所によっては、人が多くゴミ拾いをすることが通行のじゃまになる恐れがあるということもわかりました。
 その結果、私たちは、通称ケーロードと呼ばれるバーやナイトクラブが建ち並ぶエリア近辺のゴミ拾いをすることに決めました。クイーンストリート同様、清掃車が回っているのですが、ちょっと裏手に入るとゴミが散乱していて、量も、とても多かったからです。
 活動するに当たり、市民が作ったニュージーランドと日本の架け橋になりたい、将来的にいろいろな人種が集まり、活動が広がって欲しいという願いを込めて、レインボー(虹)という名前で活動することにしました。


毎週日曜日に活動をしている
ケーロードは、金曜、土曜の週末にかけて、多くの人が歩きます。それというのも、オークランドのナイトスポットとして朝方まで営業するバーなどが多くあるからです。ですから、日曜日の午後になると週末に出たゴミが道を汚しているのです。私たちが、日曜日に活動をしているのは、そういった理由があります。
 毎週日曜日午後3時にアッパークイーンストリートとケーロードの交差点近くのバス停にメンバーが集合します。そして、ゴミ袋などの道具を持ち、ゴミを拾いながら歩いていきます。
 ペットボトル、ビール瓶、たばこの吸い殻など様々なゴミが落ちています。ビール瓶の破片も多く落ちているのですが、危険ですし、すべてを拾うことは難しく、毎回強い憤りを感じます。また、パンツや靴など、何でこんなものが落ちているのか?と思うものまで落ちています。
 ケーロードをグレートノースロード方面に向かいながら、裏手に至るまで隅々を歩きます。私たちが作ったルートに沿って、アッパークイーンストリートに帰ってきて、終了します。約2時間半、雨がひどくない限り、毎週同じことを繰り返しています。
 驚くことに1週間経つと先週と同じ分だけゴミが回収できます。だいたいひとり当たり、市販のゴミ袋2袋分のゴミを回収します。別に誰からも見返りがあるわけではありません。ですが、活動を始めてから、道行く人になぜそんなことをしているの?とか、金儲け?とか、訪ねられることがありました。その度に彼らに自分たちがこんな思いでゴミ拾いをしているということを説明しています。
 また、時には、車からGood Jobと言われたり、ありがとうと声をかけてくれる人がいることで励みになります。


平日、社会福祉のボランティア活動も始める
先日、語学学校が終了したので、平日は家の近くにある老人ホームでボランティア活動を始めることにしました。ニュージーランドに来る目的のひとつでしたから、学校に通っている間から情報収集をしていました。そして、老人ホームでボランティアをしたいと直接足を運び、手伝いをすることになったのです。
 私は、特に資格などを持っていないので、介護士のアシスタントとしてお年寄りの世話をします。食事の介助から車椅子での移動、リクリエーション時のヘルプなど、さまざまなことがあります。平日、朝から夕方まで毎日通っています。
 そして、日曜日には、ゴミ拾いを行っています。
 参加している人は、現在5人。ワーキングホリデーや学生です。時期が来れば、日本に戻ってしまう人も多いのです。そんなことから活動を続けるためにも参加してくれる人捜しも大きな問題になります。やはり、人が多ければ、それだけ収穫も大きく、活動自体も広がるからです。インターネットの掲示板に書き込みをしたりして私たちの活動をお知らせし、参加者を募っています。
 最近、私の友達の韓国人に今までのゴミ拾いの経緯を話したところ、僕にもやらせてくれないか?と興味を持ってくれ、毎週土曜日に韓国人の集まりで私たちと同様にゴミ拾いの活動をしてくれています。
 もともと、ニュージーランドに来た目的は、皆違いますが実際にこの街に住んで、この国を好きになり、この国に貢献したいという気持ちを持った人達が集まるのはうれしいことです。まだ、活動は、小さなものですが今後、人種を問わず、オークランドだけに留まらずに広がってくれればいいと思っています。

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