CGアニメーター 技術を生かして仕事中
E-CUBE
CGアニメーター
コンピューター・グラフィックスのアニメーションには無限の表現方法があります。
畠田 証
Hu Hu Studio - Animator
1974年生まれ。大阪府出身。
桃山学院大学社会学部卒業後、食品会社勤務。しかし1年で退社しCG学校に通う。卒業間近の就職活動中にHu Hu Studioに作品を送りスタッフとして採用され2000年にニュージーランドに来る。休日にはビデオを観ることが多いが、ついついカメラやライティングが気になり途中でビデオを止めて見直したり、自分に納得のいく解説をつけたりするために、一緒に観る人にはウルサイと不評。

CG(コンピューター・グラフィックス)を使ってテレビ、映画のアニメーションを制作しているHu Hu Studio。世界的に見てもCGだけのアニメーション制作会社の数が決して多くない中、そこでアニメーターとして活躍している日本人が畠田証さんである。ニュージーランドをはじめ世界26ヶ国で放送されているアニメ『Buzz and Poppy』の制作に携わり、現在は新しいプロジェクトに入っているという。
 日本での学生時代はごく普通に過ごしていました。そして就職活動を始めたのですが、このときに将来のことについてはあまり深く考えていませんでした。それで卒業後に食品関係の会社に就職をしました。しかし、入社して3日目ですぐにイヤになってしまいました。それでも一年くらいは勤めたでしょうか。その間、毎日のように辞めよう、辞めようと考えていました。ただ、辞めるのは簡単だが今度は次のことも考えなければいけないと思っていました。そんなときにテレビで見たのがCGの特集でした。
小さい頃から絵を見たり、音楽を聞いたりするのは好きでしたし、何より、映画を観ることが大好きで、小学生の頃から親と一緒に色々な映画を観ていました。しかし、それらを仕事と結びつけることはそれまで一度も考えたことはありませんでした。ただ、せっかく就職した会社を辞めるのだから何か技術を習得したいと考えていましたので、そこでは自分の好きなことが活かせる分野へ行こうと思い、CGの世界に進むことにしたのです。


退職後、証さんはCGの専門学校の6ヶ月コースに入学した。
 入学する前に学校に説明を聞きに行きました。そこで就職率は1割だと言われました。それを聞いて少し躊躇しました。しかし、例え就職率が1割であっても一生懸命やってだめなら納得できるだろうと思いました。なにより、ものを作って人に喜んでもらえる仕事がしたいという気持が勝りました。
 入学してからは技術の習得と作品作りに必死になっていました。この間の私の行動範囲といえば、学校とアルバイト先のコンビニぐらいでした。また在学中はぐっすり寝たという記憶がないほど勉強しました。

 CGの世界では作品が履歴書になるという。卒業間近に、自分の顔となる作品を制作しているときにニュージーランドでの仕事の話が来た。

 Hu Hu Studioの話は父が持ってきました。父がたまたまニュージーランドに遊びにきているときに知り合いがCGのスタジオを始めるという話を聞いたのです。当時はニュージーランドの技術者たちのほとんどが『ロード・オブ・ザ・リング』のプロジェクトに参加していました。ただでさえ、キウイのCG技術者が少ない上に、みんな映画に流れていたのでスタジオを立ち上げるにあたって、スタッフの確保は急務だったそうです。それで私は自分の作品を送り、その後面接に来ました。そして採用が決まったのです。


2000年の6月に証さんはニュージーランドに来た。
 ニュージーランドで働くことに関しての抵抗はありませんでした。学生時代に英語はいつも赤点ギリギリでしたが、飛び込んでしまえば何とかなると思っていました。スタジオにはこの国に到着した次の日から入りました。まだスタートしたばかりのスタジオは私を入れて総勢4名だけのスタッフでした。挨拶の「Nice to meet you」までは良かったのです。その後、ここで使用するソフトウェアの説明を受けました。しかし何を言っているのか全然わかりません。運の悪いことにそのソフトウェアは私が使っているものとは別のものでした。説明を聞きながら、わかったようなわからないような顔をしていると相手も諦めたらしく、これを読めといって、電話帳のような厚さのマニュアルを渡してきました。英語を聞き取るのは困難だったのですが、読むのであれば何とかなると思い、マニュアルの読解に取り掛かりました。私はその作業を1ヶ月ほど行っていました。スタジオ全体が立ち上がったばかりで混乱していましたため、誰もが何をどうしたら良いのかわからない状態でした。幸運なことに、その間にソフトウェアを把握することができたのです。
 その後、ようやく最初の仕事に取り掛かることになりました。それはオーストラリア向けのHu Hu Studioの自社CMでした。CMの内容やストーリーを考えて構成する編集者と二人でチームを組んで作りました。主人公に対してカメラ(視点)の位置やライトはどこから当てるか、また色の反射や透明度、光沢具合など様々なことを話し合いながら進めていきました。お互いに初心者だったため、どちらかが一方的に進めるという形ではなく、お互いに意見を出し合い完成させていきました。会話はやはり英語でしたが稚拙なものでした。しかし実際に絵があるためにスムースにコミュニケーションを取ることができました。


初仕事の後、子ども向けアニメーションのテレビシリーズの制作が始まった。
 日曜日の朝7時からチャンネル2で放送されている『Buzz and Poppy』という、フルCGアニメーションです。このアニメは世界26ヶ国で放送されました。これはニュージーランド制作のテレビ番組では初のことです。
 フルCGアニメーションでは人間の手で絵を書くのではなく、すべてコンピューターで絵を書きます。ただ、CGアニメーションの場合は絵を書くというよりは、コンピューターの中に物語の登場人物やセットを作り、その中で映画を撮影するといった感じになります。プログラムの中にカメラの位置や照明の位置などを設定してそこで登場人物に動きの指令を与えて物語を進行させていくのです。フルCGアニメーションは世界的にもまだ、あまり作られておらず、有名な作品ではディズニーがピクサー社と組んで作った映画の『TOY STORY』や『a bug's life』などがあります。
 こういったフルCGアニメーションを制作する上では、それぞれが作業の役割を持ちます。主人公をはじめとする登場人物を作るアニメーター、背景などバックグラウンドを作る担当者、そしてそれらを合成して編集するコンポジターとなります。私は最初バックグラウンドを担当することになりました。


担当の仕事を始めてから約2ヶ月。証さんは更なるステップアップを目指した。
 仕事が少し慣れてきたため精神的にも時間的にも少し余裕ができました。そのため上司に、できることはなんでもやらせて欲しいと頼んだのです。それで物語に出てくる小道具を作ることを始めました。例えばこのエピソードではメガネが出てくるといえばそのメガネをデザインします。そして次に水が跳ねたり、煙が立ったりするシーンであるスペシャルエフェクトも手がけることになりました。水をどう表現するか、どんな量で、どんな角度で、どんな勢いでなど、そのシーンごとに合わせて制作します。こうなってくるとそれを扱う技術ではなく、今まで以上に想像力を働かせることが重要になってきました。
 そして数ヶ月後に人物を担当するアニメーターのポジションに空きができたため、私はそこを担当させてもらうことになりました。


『Buzz and Poppy』の制作が終了し、Hu Hu Studioでは現在、新しい企画がスタートしている。
 アニメーションと言うのはニュージーランドのテレビのPALシステムで一秒間に25枚、日本のNTSCシステムでは30枚の絵が使われます。その25枚なり、30枚なりをすべて使うのがフル・アニメーション。一方、その枚数を減らしたものがリミテッド・アニメーションと言います。現在の日本の多くのテレビアニメはリミテッド・アニメーションです。日本はこのリミテッド・アニメーションで発展してきた国だと思います。そこでは全体的に動きをつけるのでなく、口や背景などを動かしてコマ数を減らしています。だからと言って見ていて違和感があるわけではありません。両者の違いは例えばこちらでも放送されている『ドラゴンボール』や『ポケットモンスター』などと、宮崎駿さんのスタジオジブリが作っている映画の間で見ることができます。『千と千尋の神隠し』などでは特にまばたきなどの人間の細かい表情や筋肉の動きなどが表現されています。
 Hu Hu StudioのフルCGアニメーションでは、フル・アニメーションの枚数で制作していますので一秒間に25フレーム(絵)が必要になります。そして1日で10秒分のフレームを作ることを目標にしていますので、毎日250フレームを制作しています。もちろん各シーンによって難易度は異なりますので制作のスピードも変わってきます。登場人物1人の顔のアップでただ喋っているシーンと登場人物が5人いて、全身を映して、走っているシーンでは出来上がるスピードが何倍も違います。
 最初の頃は毎日、この目標フレーム数をこなすことで精一杯でした。分業で制作しているため、一人が遅れることはスタジオ全体が遅れることを意味します。アニメーターになって3ヶ月目くらいでやっと目標が達成できるようになりました。余裕が出てきたのは1年後ぐらいからです。


やがて証さんは作品の中に自身の個性を出す努力をはじめた。
 ところがそこで思わぬ落とし穴があったのです。それは日本とニュージーランドの感覚の違いでした。それを一番強く感じたのは、あるキャラクターを設定するときでした。私はコミカルな感じを出そうと思ってそのキャラクターに鼻提灯を作りました。ところがこれが却下されたのです。理由を聞いたところ、作品そのものが不出来と言うことではなく、鼻提灯はコミカルな感じにはならない、イメージとしては単に汚いだけだと言うことでした。私達日本人の感覚では面白いものでもキウイにとってはそうでないものがあるのです。それ以来、感覚の違いには気をつけるようにしましたし、また少し勉強するようにしました。
 すると両者の間で大きな違いが見えてきました。日本の場合は空白のシーンと言うかシーンごとの間を大切にするために、ブランク的なシーンが入っていたりします。例えば、最初に風景描写のようにトンボが一匹飛んでいるシーンがあって、そしてその次のシーンで本編に入るといったことが多々あります。一方、海外のものでは、どのシーンでも常に何かのアクションが起こされ、あまりブランク的なシーンは入っていません。
 また、宮崎駿さんの映画の海外版を見たときのことです。主人公が一人で寂しく歩いているシーンがありました。日本のオリジナルでは、バックに音楽は流れていません。時々すれ違う車のブオーンという音だけが響いています。この車の音が主人公の胸の内を表現しているのです。ところが海外版では同じシーンにBGMを流し、それによって主人公の気持を表していました。
 こういった違いは感覚的なものなので一つ一つ覚えていくしかないと思っています。


Hu Hu Studioで働くようになってから証さんは映画やテレビを素直に楽しめなくなったと言う。
 映画でもアニメでも、どれを観ていても勉強になります。特に私はアニメならではのデフォルメされた表現を自分の作品の中に取り込んでいきたいと思っています。以前『アルプスの少女ハイジ』を見ていて、お爺さんが干していたシーツをはたいたときに、その端を持っていたハイジがはたかれたシーツと一緒にフワッと浮き上がるというシーンがありました。こういったことは現実では絶対に起こりえないことです。しかし、アニメーションの世界では違和感なく受け入れられます。このシーンこそがアニメーションの良さだと思います。それを表現方法に無限の可能性があるCGを使って形にしていきたいと思います。そのために今はCGの技術の他にも、デッサンなど、アニメーションの基礎となる力を身に付けることが必要だと考えています。そしていずれは映画などにも携われるようになりたいと思っています。
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